2012-09-22
資生堂ギャラリー「リー・ミンウェイ展「澄・微」」を観てきました。

資生堂ギャラリーにて
「リー・ミンウェイ展「澄・微」」
を観てきました。
「この展示はね、せいなさんに絶対見に行ってほしいの。ぜひ感想聞かせて」
と仲良くさせて頂いているギャラリストさんに言われたこの展示。
どうしてなのかなあと思いながら
ちょうど時間が出来たので伺ったのですが。。。。
時間の許す限り滞在してしまいました。
正直涙をこらえるのが本当に大変でした。。。
リー・ミンウェイは、1964年台湾、台中生まれ。
現在はニューヨーク在住だそうです。
リーさんの作品は一言で言えば「コミュニケーション」。
交流をテーマにした作品なのかなという印象を受けました。
本展では3つの作品が展示されています。
私はそのなかの2つ、リーさんとその他の人(これは鑑賞者に限ってはいない)の
コミュニケーションをテーマにした作品が印象深かったです。
まずメインの部屋に展示されている「Fabric of Memory」(記憶の織物)。
そこには子供時代から残る手作りの布製品を一般から集め
思い出をつづったテキストと共に収めた木箱があります。
その木箱を来場者が自由に開いて鑑賞するというインスタレーションです。
ここで納められる「布製品」はいずれも地元市民を対象に集められます。
つまりそれぞれの地域の特徴が洗われるわけです。
この特徴はその展示を見に来る来場者の心に
ダイレクトに語りかけてきます。
1つ1つの木箱を開ける度に
それぞれのストーリーが映画のように
鑑賞者である私たちに話しかけてきます。
やがてそのストーリーは自分の思い出に同化していき
何ともいえない「きゅん」とした気持ちが
自分の中に充満していきます。
私は今はちょと忙しいのでお休み中ですが
縫い物が大好きです。
縫うという作業はとても生産的であり
同時に創造的であると考えています。
布は常に触れて作品に仕上がるので
まる生き写しのように感じてしまうのです。
だから完成した布製品が木箱に納められ
教会での棺のように納められている様は衝撃的でした。
創造性の終結ということで
墓地を連想してしまいました。
そこでは今ではない「別の時代が確かに終わったこと」を
強く痛感させられました。
どんなに懐かしんでもあの時は帰ってこない。
そして懐かしむことや思い出すことを止めてしまうと
あの時があったことすら無かったことになってしまう。
創造性の終結は生きてる私たちが見届けないと
より創造性が高いものがどんどん無くなってしまいます。
とても深い、深い展示でした。
そしてもう1つの作品が「The Letter Writing Project」(手紙のプロジェクト)。
来場者が思いを伝え残したい人に手紙を宛てるインスタレーションです。
手紙は観てもよいと書き手が思たものは観ることが出来ます。
こちらは私にはやばかったです。
私自身「言葉にする」ことで自分自身が気づかされるというか
癒されるという体験を何度もしています。
この美術ブログは私にとって「自分の気づき」の為に
行っていると言っても過言ではありません。
この空間には数々の物語があり
想いが詰まっていました。
何通かの手紙を拝見しました。
涙が溢れてきました。
そして手書きの手紙を読みながら
文字というのがここまで雄弁だったのかということを
改めて思い出すことが出来ました。
筆圧や筆遣いから感じられるその言葉を紡ぐ時の想いや
行間隔に秘める息づかい等
その空間の中に数々のストーリーを感じました。
それぞれの思い出や想いを展示して
自由に観ることが出来るというのは
想いのクロスオーバーが起こり
そこに新しい物語が産まれます。
しかしその物語は記録されることもなく
儚く消えてしまうような存在でもあります。
この思い出の儚さを実感することにより
実際の人対人のコミュニケーションについて
改めて考えてみようと前向きな気持ちを
鑑賞者に促してくれるような感じがします。
この資生堂ギャラリーというのは
天井の高さと部屋に入る方法がいくつもあることで
「空気の気配」をより簡単に感じることが出来るような気がします。
みんな自分と同じようにそれぞれの物語を持っていて
その物語はそれぞれ違うストーリー。
みんな違ってみんないい。
オススメします。
これからも何度か伺いたいと思います。
ハンカチ、いやきっと足りないや。
タオルを持っていきます。
10月21日(日)まで。
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
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theme : 美術館・博物館 展示めぐり。
genre : 学問・文化・芸術