2018-09-03
【Kuala Lumpur】Lostgens' Contemporary Art Space「Interdisciplinary Art Festival Tokyo 17/18 in Malaysia」を観てきました。

Lostgens' Contemporary Art Spaceにて
「Interdisciplinary Art Festival Tokyo 17/18 in Malaysia」
を観てきました。


今回は3人のアーティストのグループ展です。

まず岡田裕子さんの「女の一生」。
とても不安定で美しいカーテンに投影される朝日、空、そして夕日。
そこに一緒に写り込むのは赤ちゃん期、少女期、熟女期、そして老婆期の下着。
2分ほどで投影されるその映像は
不安定な風に揺れるカーテンに投影されるので
同じように見えるけど1度たりとも同じものはない。
女性の下着というとてもプライベートな象徴と
一生を連想させる朝日から夕日の映像。
女性の一生という本当はみんな1つ1つ違う物語が
日本社会の切り口から見ると
どのように同じに見えてしまうかを見せつける残酷さ、
でも同時に感じる美しい風景と美しい手仕事。
日本における女性の一生を象徴するこの世界観を考えさせらると同時に、
女性の立場が日本よりかは格段に開放感のあるこのクアラルンプールで
マレーシアの友人たちは
どのようにこの映像を捉えているのかなと考えさせられました。

そして韓成南さんの作品「Compliance Level 0」。
登場人物は3人、派遣社員の女性と人事部の女性、そして上司。
この派遣社員さんは本名が本人の意に反して社内に知られた経緯を怒ってる。
大企業の人事部が当人に謝罪する人事部の女性が
言い訳しながらニヤニヤしながらの謝罪。
その機械的な対応がさらなる怒りを。。。
というワンシーンがまるで戯曲のように演じられます。
ここで疑問。英語の役があるので意味がわからないことはないと思うんだけど
マレーシアの人、この彼女の怒りの原因はわかるのか?と。
英語名を自分で勝手につけても無問題という東南アジアで英語を使う人々。
日本で在日コリアン女性が通名を使う気持ちとその通名とどう向き合うかの葛藤。
彼らにはなかなか難しいテーマだったかも。
でも、怒りの意味がわからなくても絶対伝わっただろうなと思ったのは
「怒りの行く末に戸惑う様」。
先ほど「怒りの原因」と書きましたがこの映像、
何回も見てると「怒りの塊が三人の間で浮遊してる感」が見えてくるんです。
怒ってるのはわかるんだけどさあ。。という感じの感情。
人の怒りの原因とかそんなに簡単に言ってはいけないと
諭されてるような感覚になります。
怒りの感情と改善のための要望の感情。
本来ならこの感情は混合すべきではないんだけど、でも混合しちゃうよね。
してしまうよわかるわあという身に覚えのあるザワザワ感を呼び覚ます。
深く深く心を揺さぶりました。

そして西山修平さんの「timeless video -areas-」。
なんとなく見覚えある景色ととても抽象的な景色。
見覚えある景色は気仙沼や石巻の風景。抽象的な景色は
「同じ映像の表現方法をピクセル変更して再作成したもの」だそうです。
ちなみにこの作品を発表した際、「被災地をネタにするな」的な批判があったとのこと。
そうか。抽象的な映像であってもそうでなくても
「伝わらない」ことはあるんだなあと気づかされました。
ちなみに私、父の墓が会津若松にあるので
被災地に関連する作品はつい見入ってしまいます。
そして「伝わらない」という葛藤にいつも苦しみます。
その伝わらないをこのように視覚化してくれるのは
新しい気づきを感じました。
このようにこの3作品ともとてもシンプルだけど
社会的なメッセージを強く持っています。
その社会的なメッセージに対して
クアラルンプールのアートラバーはどんな風に反応するのかなーと
遠目で見ていたのですが皆さんとても「自由」。
私がシンガポールから来たからかもしれません。
私が日本人だからかもしれません。
映像作品に対して
「理解をしなきゃいけない」
「自分がどのように解釈しているか人に見抜かれてはいけない」
などのような縛りが全く感じられない「自由」な雰囲気。
極東アジアをひとくくりで言われるとなんだかなあと思うように、
東南アジアもそこで暮らす人々の思考は全然違うんですね。
このようなアートスペースも雰囲気が全然違うんだなあと改めて感じました。
自分自身は3カ国は結構行き来してるかなって思っていたのですが
まだまだ知らないこといっぱいありそう。
なんだか無性にワクワクしてきました。


展示は9月11日まで。
チャイナタウン界隈の雑居ビルの3階(エレベーターなし)なのですが
とても雰囲気のある素敵なスペースです。
万が一やってなくてもこの界隈は
おしゃれなカフェや美味しい庶民系レストランがいっぱい。
やってない場合は近辺でお茶やお食事を楽しんで
ぜひ足をお運びください。
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theme : 美術館・博物館 展示めぐり。
genre : 学問・文化・芸術