
大好評を頂いております
「夏休み特別企画「あの方のあの時自由研究、そしてこれからの自由研究」
第八回は
多摩美術大学美術学部 共通教育 教授の高橋周平先生です。
高橋先生は子連れ鑑賞スタイルの私たちにいつも寛容に接して頂いてるので
本当に有り難いと思っています。
以前大学の写真のWSにも参加させて頂きました。
ありがとうございます。
次回はぜひ親子で参加させて頂きたいです。
この企画はいたってシンプルです。
皆さんに2つの質問をさせて頂いています。
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1:ご自身が小学生の時思い出に残っている自由研究は何ですか。
2: 今小学生の自分が目の前に現れて「自由研究のテーマを一緒に考えて」といわれたらどんなアイデアを伝えますか。
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現在活躍されてるクリエイターさんがどのような自由研究をしていたか、
そして今ならどんな自由研究をするのか。
興味深いお話が沢山聞けそうです。
では高橋先生よろしくお願いします(^^)。
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1:ご自身が小学生の時思い出に残っている自由研究は何ですか。
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これが不思議なことにふたつしか覚えてないんですよ。
必ず毎夏あった宿題だし
それなりに手を抜かなかったはずなんだけど。
一番覚えているのは小1のとき。
朝顔を育て、それの観察日記を書きました。
発芽の様子はどうだったか、
ツルはどっち巻きになるのか、
どんな色の花になるのか、
種はどうやって取るのか・・・
発芽からですから、
思えば親の協力があったんでしょうね。
夏休み前から種を植えていたはずですし、
発芽の様子は夏休み前に目撃したはずですから。
このとき、はじめて
百科事典を開いたのではないかと思います。
重かったし、調べたかった答えに
ぴたっと行きあたったわけではないけど、
あの重さ、不自由さが、知識の重みとなって
尊敬の対象になったような。
答えはどうでもいいんですね、子供って。
この自由研究は、
「はじめから終わりまで丁寧に毎日観察しました」
と評価されて銀賞でした。
金賞の子は「蚊の観察」でした。
吸血した際の腹の赤さなどもすごく緻密に表現されていて
実に大人っぽかった。
正直、まったく負けていると感じました。
でも、そのとき同時に
「この絵は大人の人が描いたに違いない」
こともわかりました。
審査する先生や大人の人ならそのことを見抜けたはずなのに
金賞ということは、
「全部自分でやらなくてもいい」ということ。
悔しかった。
方言で言うと「なんねー、損したわ!」です。
父親が朝顔を描こうと手伝ってくれるのを
ぼくは「それはいけないことだ」と思い込み
断っていたから。
あっという間に面白くなくなって
それ以降は自由研究に身が入らなかった。
ドリルやその他のことを片付けるのに情熱を燃やした、かな。
ぼくは、その後の人生で、
自分は「反体制」的である
と感じることが多いのですが
原点を探るとここだったような気がします。
自由研究でもうひとつ覚えているのは
4年生のときだったと思います。
<スーパーシャンプーの作り方>という、ふざけた内容でした。
要はお風呂にあるものを全部混ぜ合わせただけ。
その調合具合を
(まったく計ってないのに)
何グラム、これを何グラムみたいな風にニセ実験しました。
(当時は写真なんて使いませんから)色鉛筆で描写してね。
こってり感、シズル感には注意を払いました(笑)。
その後爆発的に流行するリンス・イン・シャンプーはぼくの発明です。
こんなくだらないことを堂々とやったのは
これを見て先生がなにを言ってくるか確かめてやろう
という反体制的気分があったんだと思います。
ぼくはもう、あのころからずれていた。
いい子たちはちゃんと線路に乗って
草木染めなんて大人受けすることをやってるけど
ぼくはこうやってときどき脱線してました。
その分、勉強では負けたくないという思いが
ますます強くなりましたね。
いい子ちゃんたち、いい子ちゃんを好きな先生を困らせるには
それが一番いい方法でした。
ぼくの心の中ではこんな風に
自由研究を起点にして生まれた<嵐>が吹いていました。
でも田舎の子ですから、根はまじめ。
ぼくもいい子ちゃんの一人だったんでしょうね。
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2: 今小学生の自分が目の前に現れて「自由研究のテーマを一緒に考えて」といわれたらどんなアイデアを伝えますか。
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学年にもよりますが、自分の子供にしてやろうとして
できなかったことを思い出してみますと・・・。
つい高学年向けになっちゃいますが、いいでしょうか。
a. 無人島体験・・漁師さんに無人島に運んでもらって、3泊程度します。瀬戸内海なら十分に可能。ぼくの経験では必ず雨が降ります。子供は必ず岩場で足を切ります。浜辺にテントを張っていたら、必ず波にやられ、撤退を余 儀なくされます。それがまた不自由で楽しいんですよね。どんなに困っても、船は約束の日時まで来ませんし。
b. 一日3ロック!・・ロックの名アルバムを一日最低3枚を聞きこみます。夏 休みで約100枚。夏の研究って言いますが、夏っぽさにこだわりすぎてつまん なくなっていると思います。<1ヶ月の自由な時間>ととらえた方が、内容が
豊かになるのではないでしょうか。ロックを体系的に知っておくと、中学になってから、友人の尊敬を得られます。
c. 同じく名画(洋画邦画問わず)バージョンもいいですね。いい映画を見る ことは、人生においてすごく大事なこと。 映画がいいと思うのは、ストーリーや登場人物の性格設定がきちんとできて いるから。音楽やアートには、この具体性が薄い。映画やドラマ、小説を共 有したときだけ、「あの女の子はどうして彼をふっちゃったんだろう ね・・」なんて話が親子でできるんじゃないでしょうか。そういう話ができ たら最高だなあ。
d. ギャラリー巡りもいいと思います。アートの道を志したいと本人が言うな ら、徹底的に見せまくりたいと思います。東京を隅々まで散歩する意味でも 子供が得るものはたくさんありそう。池波正太郎を気取って、遅いお昼にお そばの名店なんて、いいなあ。
e. 生きていくためのクッキング20!・・まず、最初の1週間は、包丁の使い 方、野菜の洗い方、切り方、ご飯の炊き方、卵のゆで方、ゴミの始末の仕方など、基本を仕込みます。 その後の3週間で、フライパンの使い方、肉の焼き方、パスタのゆで方、調味料の使い方、メニュー全体の組み立て方、買い物の仕方などを、実際のクッキングを通じて教えていきます。女の子よりも男の子なら、なおさら教えてやりたい。きちんと料理ができる男、将来必ずモテます。
f. ギターのレッスン・・ギターは誰でも最初はしんどいものです。何しろ指 先で鉄の細い弦を押さえまくるのですから、痛いに決まってる。1ヶ月かけて、弾けるようにしてやりたい。中学に上がって、必ず女の子にモテます。
おまけに、ロックをやりたくてうずうずしている不良たちの尊敬も勝ち得ます。
g. 写真など・・ぼくの専門である写真撮影や動画作りなども体験させてやり たいけど・・。もちろん本人が望むなら毎日撮ってもらって、毎日それを見 返しながらあれこれ話をしてみたい。ただ、写真というのは、たった一人で 世界と対峙する、孤独であることから出発する表現だと思うので、小学生に は少し酷かな。メランコリックな中学生くらいからはじめてもらったらいい んじゃないでしょうか。
・・・と、ここまで書いてきて気づきました。
あ、そうか、ぼくは教員だから夏休みを一緒に過ごせるのです。
それが前提のプランなのでした。
ずっとお仕事のお父さんには、できることとできないことがあるかなあ・・。
(おまけに<女の子にモテるかどうか>ばっかり・・)
でも、お父さん、お母さん、できるだけ時間を見つけていただき、
ご自身の得意技をお子さんに伝授する時間として
夏休みを活用していただけたらいいなあと、そんな風に思うのです。
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高橋先生ありがとうございました!
これからリンスインシャンプーを使う度に
高橋先生を思い出してしまいそうです!
高橋先生オススメのこの夏のイベントです。
おおっと感じた方はぜひお問い合わせ下さい。
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1)ポートフォリオ研究会
7月の末頃、東京工芸大学キャンパス@中野坂上で
第5回ポートフォリオ研究会を開催します。
学生にとって、中堅アーティストにとって
どのようなポートフォリオが理想的なものなのか
それをデザイン、メディア、アートの視点から徹底的に研究する会です。
これまでは毎回、40名程度の観客を動員しています。
どなた様でも、ご関心のある方、お悩みのある方、ぜひご参加ください。
無料。終了後、飲み会あり。
詳細については、FACEBOOK上で、
「高橋周平」(野球選手じゃないよ、多摩美術大学教授です)
に友達リクエストを出していただき、
メッセージで「参加希望、詳細教えて」などお書き込みください。
「ポートフォリオ研究会」のオフィシャルページにご案内いたします。
2)ぼくのバンド、「ザ・コンヨクーズ 12th LIVE」を開催いたします。
8月4日 14:00~16:00 DOLPHY(ドルフィ)にて。
入場料(ドリンク別)2000円。学生は1000円。
ぜひ、お越し下さいませ!
http://www.dolphy-jazzspot.com/index.html
(まだまだマイナーなので、8月4日のスケジュールに入れてもらっておりませんが、ライブはやります!!)
theme : 美術館・博物館 展示めぐり。
genre : 学問・文化・芸術