2010-12-20
大阪・心斎橋Six「宮島達男個展『Time Train』」を観てきました。

大阪・心斎橋Sixにて
「宮島達男個展『Time Train』」
を観てきました。
よくよく考えてみると宮島さんの作品は
私たち親子はとてもよく遭遇しています。
六本木の巨大デジタルカウンターの前は何度も通ってるし
直島の家プロジェクトも楽しむことが出来ました。
そしてBLDギャラリーでの個展では
宮島先生ご本人からサプライズを頂く機会にも遭遇できました。
BLD GALLERY「宮島達男 その人と思想」を観てきました。
なので宮島達男氏の展示はいつもチェックしてるし
twitterも拝読しています。
twitterを拝読してるとなんか涙が出そうになる時も。
アートのことで自分を卑下し苛み責める。若いときはありがちだけど、そんなに責めたら病気になる。アートは自由になるため、笑顔になるためにあるのに。振り回されるのはいけない。アートのために君がいるのではない。君がいるからアートがあるのだから。
私もこういうつぶやきが出来る大人になりたいです。
4歳の男の子は皆電車が大好きなものです。
そしてギャラリーも好きなものです。←ここうちだけですね
それならやはり行かなくては!ということで
大阪・心斎橋Sixに毎年恒例の京都旅行と組み合わせて出かけることにしました。
さていざ会場に入ってみると第一印象は
「線路が高い」
でした。
視線よりかなり高い場所に線路は展示されています。
身長162センチの私でも見上げるような感じで線路を走る列車を眺めます。
そして台車に積まれたデジタルカウンターは窮屈な感じに積み上げられています。
数台ある荷台には扉が閉まっているものもあり
隙間からデジタルカウンターが見えています。
テーマはアウシュビッツ。
駅の無い列車はユダヤ人が運ばれていく様を表しているとのこと。
ずっと見ているととても自分が無防備に見つめていることに気づきます。
それにしても線路が「高い」。
以前拝見したインタビュー等でみたドイツの展示の写真では
高さを感じられなかったのでとても意外な印象を受けました。スタッフさんに
「ドイツ人ってもしかしてすごく背が高いのですか?」とアホな質問をしてしまったほど。
すると「この高さはドイツとは違うそうです」とのお返事が。
ぼーっと考えていると以前観た別の電車の展示を思い出しました。
電車の展示で今年とにかく感銘を受けたのが
ICCのクワクボリョウタさんの《10番目の感傷(点・線・面)》でした。
こちらは暗闇の中で電車が床に引かれた線路を走っていきます。
先頭のライトが線路際に置かれた沢山のふつうの小物をとてもマジカルなものに変化させていきます。
ここでは線路を座って鑑賞するスタイルがおすすめなんです。
もし頑張れるのなら寝転んでしまうのもあり。
座ってみて電車が行き来しているのを見てると
自分の懐かしい思い出とか昔あった人が話した思い出とかをぼんやり思い出すような感覚になります。
子供達も皆笑顔で見ています。
しかし
同じ展示でもこの「Time Train」はまた違った雰囲気。
息子もどちらかというと凝固気味。
それは
テーマがアウシュビッツであるから
カウンターが死へのカウントダウンを連想させるから
いろいろ考えたのですが
線路の高さが鑑賞側に強いメッセージを与えているのではと
自分なりに結論を出してみました。
視線をあげて猛烈なものを見続ける姿勢は
「天井画を鑑賞する姿勢」とか「教会や神社仏閣を見上げる姿勢」に似ている気がします。
あごを上げ気味にして視線を上にして一心不乱に強烈なメッセージ浴びる姿勢は
同時に自分が無防備というか無力な存在になることになるような気がするのです。
宮島さんのこの「Time Train」には
そのような神々しさと強いメッセージを感じさせます。
それがドイツは戦争責任や保証を明確にしているのに
日本は戦争についてしっかりと自分の立場をはっきりさせていないのではないか
それでいいのか??
今この「Time Train」を観ているあなたは日本人として今の日本をどう思っている?
と静かに、でも強く問いかけされているような感じをうけました。
息子に感想を聞くと
「お寺みたいだった。柱もたくさんあったし。途中から怖くなった。
すごくかっこよかったけど怖かった。」
だそうです。
「電車もいろいろな作品があるんだね」としみじみ言ってました。
「アートなんかは所詮、人間が幸せに生きるためにあるもの。」
と宮島達男氏はインタビューで語っておられましたが
その言葉の裏には
「幸せってのは自分の立ち位置を認識することから始まるんだよ。
あなたは今どこにいるか分かってる?」
というメッセージがあるような気がしてなりません。
日本という国が迷走を続ける昨今
「自分」というものをちゃんと意識することを忘れずに
自分の世界観をかっこよくスタイリッシュに発信する作家さんがいるということを
主人や息子と体感させることが出来て本当に嬉しかったです。
12月29日(水)までです。
おすすめです。関西の方ぜひ。
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theme : 美術館・博物館 展示めぐり。
genre : 学問・文化・芸術